猫がエサを食べたそうにしているのに食べられなくなったり、よだれや口臭がひどくなってきたりしたら、口の中に異常が起きているかもしれません。猫の口を開けて見てみると、口の中が赤くただれ、潰瘍ができている場合もあります。潰瘍ができると、患部の組織が深くえぐれた状態になり、多くの場合痛みを伴います。
どのような病気がきっかけとなって猫の口に潰瘍ができるのでしょうか。猫の口の中に潰瘍がある時に考えられる病気について取り上げます。
潰瘍とは?
潰瘍とは、何らかの原因で皮膚や粘膜の表層が崩れ落ち、ただれ、深くえぐれた状態を指します。似た症状を現す言葉に「びらん」がありますが、これはえぐれ方が浅い場合に使います。
猫の口の中に潰瘍ができる原因
口の中は、体の他の場所で起きた病気の影響を受けることがよくあります。そのため、猫の口の中に潰瘍ができる原因は、口の中の炎症や腫瘍、歯の疾患だけでなく、ウイルス感染症や腎臓病なども考えられます。
潰瘍ができると概ね痛みを伴いますが、できた原因によってはあまり痛みを感じない場合もあります。
猫の口の中に潰瘍がある時に考えられる病気
難治性口内炎
猫の口内炎は、何らかの原因によって口の中に炎症が生じる病気です。炎症だけでなく、赤く腫れたり、ただれて潰瘍ができたり、出血したりすることもあります。
特に潰瘍は、治りづらい難治性口内炎が原因でできることがあります。難治性口内炎は、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルス、猫カリシウイルスへの感染、免疫力の低下による口腔内の細菌への日和見感染、歯垢・歯石の付着、腎機能の低下など色々な理由で起こる可能性がありますが、原因はまだ明確になっていません。
難治性口内炎の潰瘍は、喉の手前にあるひだ(口峡部)などの口腔粘膜、舌などに出ることが多く、患部がえぐれます。痛みが強いため、エサを食べたいのに食べられない状態になり、体重が減っていきます。よだれの量が増えて垂れ流しになり、口臭もひどくなります。
歯周病
歯周病がきっかけとなって口内炎が引き起こされることがあります。歯周病は歯肉炎と歯周炎の2つの病気の総称で、歯肉炎が悪化することで歯周炎を発症します。
歯肉炎は、歯垢の中にいる歯周病菌が、歯ぐき(歯肉)に炎症を起こした状態を指します。歯垢は数日間で石灰化して歯石となり、その上にさらに歯垢がくっついていきます。歯周病菌の炎症によって歯と歯ぐきの間に歯周ポケットと呼ばれるすきまが開いていき、どんどん深くなって、歯を支える歯根膜や歯の土台である歯槽骨にも悪影響が出ます。この状態を歯周炎といい、歯がぐらつくようになります。
このように、歯周病になると、歯垢・歯石はずっと歯と歯ぐきにくっついて悪影響を与え続けます。その結果、歯ぐきに潰瘍ができる潰瘍性歯周口内炎を発症することがあります。潰瘍性歯周口内炎になると、口臭やよだれが目立ち、時に出血も見られます。痛みがあるので、エサを食べられなくなることもあります。
好酸球性肉芽腫症候群
猫の好酸球性肉芽腫症候群は、白血球の一種である好酸球によって引き起こされる皮膚病です。無痛性潰瘍、好酸球性局面(好酸球性プラーク)、好酸球性肉芽腫という3つのタイプがあります。このうち、無痛性潰瘍は口に症状が出て、唇、上あごや舌といった口腔内に潰瘍ができます。外見は痛々しいですが、痛みはあまり出ません。
好酸球性肉芽腫症候群を発症する原因は、アレルギーやウイルス、自己免疫疾患など諸説ありますが、まだ分かっていません。ただ、オス猫よりメス猫に多い傾向にあります。
猫エイズ
猫エイズは猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染することで起こる病気です。感染猫とのケンカで咬まれるなどした時に、唾液から感染します。
感染後、潜伏期間、発熱などの軽度の症状、無症状の期間という段階を経たのち、免疫力が低下し始めます。難治性口内炎や歯肉炎が起こりやすく、患部が赤くただれたり、潰瘍ができたりすることもあります。口臭がひどくなり、痛みのせいでよだれを垂れ流すようになります。口が痛くてエサを食べられなくなることもしばしばあります。
猫白血病ウイルス感染症
猫白血病ウイルス(FeLV)に感染することで起こる病気です。感染猫とのケンカやグルーミング、食器の共有、母子感染などによって感染します。
FeLVは血液細胞(赤血球、白血球、血小板)を作る骨髄で増殖します。そのため、免疫細胞である白血球が作られにくくなることがあり、難治性の口内炎ができやすくなります。難治性の口内炎を発症すると、口腔内が赤くただれたり、潰瘍ができたりします。
猫カリシウイルス感染症
猫カリシウイルス感染症は、猫風邪の一種です。猫カリシウイルスというウイルスに感染して起こり、人間の風邪に似た症状が出ます。
猫カリシウイルスに感染すると、しばしば口内炎ができます。患部が赤く腫れたり、ただれたり、潰瘍ができたりします。口臭やよだれも目立つようになります。その他、発熱したり、元気や食欲がなくなったりしますが、正常な免疫力がある成猫なら自然に治ります。
扁平上皮がん
猫の扁平上皮がんは、皮膚や口腔粘膜にある扁平上皮細胞ががん化する病気です。口の中の場合、歯ぐき、頬の内側の粘膜、舌などに症状が出ることが多く、患部は赤く腫れ、ただれたり潰瘍ができたりする他、出血することもあります。
痛みがあるため、エサを食べられなくなることもあり、体重が減って元気もなくなっていきます。
尿毒症
猫の尿毒症は腎不全の末期症状の一つです。腎機能が低下して尿から老廃物を排出できなくなることで起こります。老廃物は血中にたまり、やがて全身を循環して全身の臓器に障害をもたらします。口腔粘膜も悪影響を受け、ただれたり、潰瘍ができたりします。
尿毒症になると、口内炎だけでなく、口から尿のようなにおいがすることもあります。吐き気、食欲不振、貧血などの症状が出て、最終的に老廃物が脳神経を侵し、痙攣や昏睡といった神経症状が現れた末に死亡します。
まとめ
いかがでしたでしょうか?口の中に潰瘍ができると、猫の生活の質は著しく落ちます。潰瘍のせいでエサを食べられなくなると、体重が減るだけでなく、元気もなくなってしまいます。潰瘍は口臭やよだれといった症状とセットで見られることが多いので、猫の口に異変を感じたらすみやかに動物病院に連れて行き、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。
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