健康な猫の場合、耳垢はほとんどたまりません。そのため、飼い主が「猫の耳掃除をしなければ」と考えるほど耳垢がたまっている状態は、何らかの病気を発症している可能性が高いといえます。病気の場合、耳掃除をしてもすぐにまた耳垢がたくさんたまるという特徴があります。
そもそも耳垢とはどのようなもので、なぜたまるのでしょうか。順に見ていきましょう。
耳垢について
耳垢は、外耳道と呼ばれる、耳の入り口からL字に折れ曲がって鼓膜まで続いている場所で産生されます。外耳道には耳垢腺と皮脂腺という腺があり、そこから出た分泌物と、はがれ落ちた表皮、外から耳に入ってきたホコリや細菌などが混ざって耳垢になります。
健康な猫であれば、飼い主が気になるほど耳垢がたまることはありません。耳垢が目に見えてたまっている場合は、病気や体質など、何らかの原因が潜んでいる可能性が高いといえます。
猫の耳に耳垢がたまる原因は?耳垢の色や形状は?
猫の耳に耳垢がたまる原因は、細菌や真菌(カビ)への感染、耳ヒゼンダニ(耳ダニ)の寄生、アレルギー、ペット用シャンプーなどの異物の混入、耳の中の湿度、耳垢がたまりやすい体質など多岐に渡ります。また、甲状腺の病気が原因で耳垢がたまることもあります。
これらの原因がきっかけとなって外耳道に炎症が起き、皮膚のターンオーバーがさかんになってはがれ落ちる表皮が増えたり、大量に増殖した耳ダニのフンや死骸が混ざったりすることで、耳垢が増えます。
耳垢の色は黄色、茶褐色、黒色などが多く見られます。形状は原因や猫の体質によって様々で、ベタベタしていることもあれば、カサカサしていることもあります。また、においが出る場合もあります。
耳垢がたまりやすい体質の猫とは?
スコティッシュ・フォールドやアメリカン・カールは体質的に耳垢がたまりやすい猫種です。どちらの猫も耳の構造が複雑で通気性が悪く、外耳道がジメジメしやすいため、細菌や真菌が感染・繁殖しやすくなります。さらに耳が垂れているタイプのスコティッシュ・フォールドだと、耳の入り口が塞がれた状態になっているため、より通気性は悪くなります。
猫の耳垢がたまっている時に考えられる病気
細菌性外耳炎
不適切な耳掃除で外耳道を傷つけたり、ペット用シャンプーや水が誤って猫の耳に入り、外耳道が湿ったりすることで、黄色ブドウ球菌や緑膿菌といった細菌の感染が起きやすくなります。感染後、細菌は増殖して外耳道に炎症を起こします。細菌性外耳炎では黄色の耳垢が出ることが多く、かゆみや痛みがあります。
真菌性外耳炎(マラセチア性外耳炎)
猫の真菌性外耳炎で特に問題となるのは、マラセチアという真菌です。マラセチアは皮膚や粘膜に常在しており、普段は無害ですが、他の原因で起こった外耳炎やアトピー性皮膚炎など、皮膚のバリア機能が落ちると急激に増殖し始め、外耳道に炎症を起こします。マラセチアによる耳垢は茶褐色であることが多く、甘酸っぱいにおいがするのが特徴です。かゆみがあるため、猫は耳を気にして頭を振ったり、耳をかいたりします。
耳ダニ感染症
耳ヒゼンダニという寄生虫が猫の外耳道に寄生することで外耳炎が起こります。耳ヒゼンダニは一般に「耳ダニ」と呼ばれており、感染している動物や母猫と接触することで容易に感染します。感染後は旺盛な繁殖力でどんどん増え、そのフンや死骸が混ざった、黒くカサカサした耳垢が大量に作られます。また、耳ダニ感染症は非常にかゆみが強い病気です。
アトピー性皮膚炎
猫のアトピー性皮膚炎は、ダニ、真菌、花粉などのアレルゲンに体が反応することで起こる皮膚炎です。もともとアトピー性皮膚炎による炎症は顔に現れやすいのですが、耳の中に炎症を起こすこともあります。
すると、皮膚のバリア機能が低下することから細菌やマラセチアが感染しやすく、細菌性、真菌性の外耳炎を併発することが多くなります。耳垢が出ますが、二次感染した原因によって色は異なります。また、アトピー性皮膚炎による外耳炎では、耳介や外耳道の炎症、かゆみが見られます。
食物アレルギー
猫の食物アレルギーは、アレルゲンとなる特定の食べ物を食べた時に皮膚に炎症が起こる病気です。アトピー性皮膚炎と同じく耳の中に炎症が起こることがあり、皮膚のバリア機能が低下します。そこに細菌などの感染を受け、細菌性、真菌性の外耳炎を併発しやすくなります。耳垢は出ますが、色は二次感染した原因によります。その他、食物アレルギーによる外耳炎では、外耳道の炎症やかゆみが見られます。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の症状はとてもよく似ており、食物アレルギーが原因だと断定するには、除去食試験を行う必要があります。
甲状腺機能低下症
猫の甲状腺機能低下症は、体の代謝を促進する甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。元気がない、毛づやが悪いといった症状の他、皮膚炎や外耳炎も起きやすくなります。甲状腺機能低下症による外耳炎では、黄色の耳垢がたくさんたまることがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?猫の耳垢は、スコティッシュ・フォールドやアメリカン・カールといった外耳炎になりやすい猫種ではなく、健康であれば、ほとんどたまることはありません。もし猫の耳に耳垢がたまっていたら、動物病院での受診をおすすめします。特に耳垢が黒い場合は、非常に強いかゆみを伴う耳ダニ感染症の可能性が高いため、治療を急ぐ必要があります。
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