チェリーアイは、第三眼瞼腺という涙を分泌する腺が、何らかの原因で目頭にある第三眼瞼(瞬膜)の端から外に飛び出してしまう病気です。「第三眼瞼腺脱出」という病名ですが、飛び出た部分が赤く腫れてさくらんぼのように見えることから、通称でチェリーアイと呼ばれています。
チェリーアイは犬に多い病気で、猫での発症は稀です。ただ、純血種、MIX猫ともに発症する可能性はあります。
猫のチェリーアイについて詳しく見ていきましょう。
原因
猫の目には、上まぶたと下まぶたの他に、人間にはない第三のまぶた「第三眼瞼」があります。両目の目頭の端に少しだけ見える白い膜のようなものです。
第三眼瞼の裏には涙を分泌する「第三眼瞼腺」があります。第三眼瞼腺は結合組織によって第三眼瞼に固定されていますが、その結合組織が先天的に欠けていたり、くっつく力が弱かったりすると、第三眼瞼腺が外に飛び出してしまいます。二歳くらいまでの若い猫に発症することが多いため、結合組織の異常は遺伝性の疑いがあります。
その他、目の外傷、第三眼瞼の炎症、腫瘍が原因で第三眼瞼腺が飛び出すこともあります。
症状
第三眼瞼の端から第三眼瞼腺が飛び出て、さくらんぼのように腫れて赤くなります。両目に症状が出ることもあれば、片目のみの場合もあります。
痛みはありませんが、視界が狭まり、目のすぐ近くに腫れ上がった第三眼瞼腺があることで、猫が気にして目を引っかいたり床にこすりつけたりすることがあります。すると第三眼瞼腺自体の炎症もひどくなりますし、結膜や角膜が傷つき、結膜炎や角膜炎を併発したりします。
ここで、結膜炎、角膜炎を併発した場合の症状を見ていきましょう。
結膜炎を併発したら…
結膜は、まぶたの裏側(眼瞼結膜)と眼球の白目の部分(眼球結膜)にあります。結膜が傷つくことで次のような症状が現れます。
- 結膜が充血して腫れる
- かゆみ、痛みのために目をこする
- 目やにが出る
- 涙を流したり、涙目になったりする
角膜炎を併発したら…
角膜は黒目の表面を覆っている透明の膜です。角膜に傷がつくと次のような症状が現れます。
- かゆみ、痛みのために目をこする
- 目やにが出る
- 涙を流したり、涙目になったりする
- 光をまぶしそうにして、目を細める
概ね結膜炎の症状と変わりませんが、角膜炎の場合、悪化すると角膜が白く濁ったり、本来角膜には存在しない血管が見られたりすることもあります。
さらに傷口に細菌などが感染すれば、角膜がただれる「角膜潰瘍」や、角膜に穴が開く「角膜穿孔」にもなりかねません。いずれにせよ、角膜炎は悪化すれば失明の危険性があります。
ただ、目を引っかいたりしなくても、腫れた第三眼瞼腺が結膜や角膜を刺激して炎症を起こすこともあります。
また、チェリーアイを長期間にわたって放置すると、第三眼瞼の中にあるT字型の軟骨が変形してしまい、整復が難しくなります。
対策
飛び出した第三眼瞼腺を元の位置に戻します。戻し方はチェリーアイの状態や、再発を繰り返しているか否かによって変わります。
軽症の場合
軽症の場合は、飛び出した部分を手で押し込んで元の位置に戻し、抗生物質や抗炎症剤などの点眼薬を使用します。猫が目を触らないようにエリザベスカラーを装着させます。
重症の場合や、再発を繰り返す場合
チェリーアイは再発しやすい病気です。何度もなる場合は、全身麻酔下による外科手術で第三眼瞼腺を元の位置に戻します。
いくつか方法がありますが、その一つに「ポケット法」があります。ポケット法は、第三眼瞼腺の周囲を切開してポケットを作り、その中に腫れた第三眼瞼腺を入れ込んで縫い、元の位置に戻すという方法です。ただし、外科手術を行っても再発する可能性はゼロではありません。
また、初めてチェリーアイを発症した場合でも、状態が悪ければ外科手術を行うことがあります。
なお、さくらんぼ状に腫れ上がった第三眼瞼腺は安易に切除してはいけません。第三眼瞼腺は涙を産生する場所のため、切除すると涙の量が減ってドライアイになります。ドライアイになると目の表面が乾いて「乾性角結膜炎」を発症し、悪化すると失明に至る危険性もあります。手技でも手術でも、第三眼瞼腺は温存するようにしましょう。
チェリーアイは早期発見・早期治療が大切
チェリーアイは予防しづらい病気です。ただし、チェリーアイを早期発見・早期治療することで、続発する結膜炎や角膜炎を予防することはできます。猫の目頭あたりに赤くて丸いものを見つけたら、すぐに動物病院で治療を受けましょう。
猫が目を気にするしぐさをしていたら要注意
チェリーアイになると、猫は目のあたりを気にして触ったり、床にこすりつけたりといったしぐさをします。そのような行動を見つけたら、すぐに猫の目をチェックしてください。目頭にさくらんぼのような赤く丸い腫れはできていないか、目やにがたくさん出ていないか、涙目ではないか、など。
異常が見つかったら、早期に動物病院で適切な治療を受けるようにしましょう。
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