「多発性嚢胞腎」は、ペルシャ系の猫によく見られる遺伝性疾患です。腎臓に液体が入った袋がボコボコといくつもでき、最終的に腎不全の症状を引き起こします。
最近ではペルシャ系だけでなく、アメリカン・ショートヘアやスコティッシュ・フォールドなどでも発症が認められています。
多発性嚢胞腎とはどのような病気なのか。原因、症状、治療法、予防法についてご紹介します。
多発性嚢胞腎の症状
多発性嚢胞腎になると、子猫のころから腎臓に液体が入った袋のようなもの(嚢胞)ができます。個体差はありますが、進行性の病気のため時を経て少しずつ嚢胞が増え、大きくなり、着実に腎機能に障害をきたします。それに伴い腎不全と似た症状が現れ始めます。
症状は3歳以降に出ることが多く、食欲不振、体重減少、疲れやすい、多飲多尿、嘔吐、脱水症状などが見られます。また、嚢胞が大きくなることで腎臓全体が肥大化。触診で左右の腎臓の膨らみが分かるほどになります。
多発性嚢胞腎の原因
多発性嚢胞腎は遺伝性疾患です。親猫のどちらか一方が病気の遺伝子を持っていると、優性遺伝により50%の確率で子猫に遺伝します。
ペルシャ、チンチラ、ヒマラヤンが好発猫種です。ただ最近、アメリカン・ショートヘアやスコティッシュ・フォールド、雑種の猫でも発症が認められています。
多発性嚢胞腎の治療法
現在、多発性嚢胞腎を根治させる治療法は見つかっていません。そのため、対症療法が主な治療法となります。
食事療法、皮下輸液、利尿剤や血圧降下剤の投与、いつでも新鮮な水を飲める状態にしておく、など。嚢胞にたまった水分を注射器で抜くこともありますが、そのあとも次々に嚢胞ができ、水がたまっていくため、いたちごっこになります。
多発性嚢胞腎の予防法
遺伝性疾患のため予防法はありません。多発性嚢胞腎の好発猫種の場合、1歳前後のときに動物病院で検査を受けておくと安心です。
検査方法はエコー検査が主流です。エコー検査なら麻酔をかけなくても高い精度で多発性嚢胞腎を見つけることができます。
遺伝子検査も有効です。猫への負担が少なく確定診断もできますが、設備の整った施設でしか検査できず、遠方の場合はかかりつけの動物病院から検体を郵送してもらう必要があります。
進行性の多発性嚢胞腎と、気長に付き合っていく
猫が多発性嚢胞腎だと判明したら、対症療法を行ってできるだけ腎臓に負担をかけないようにすることが大切です。ゆっくり年月をかけて症状が進んでいくため、その時々の状態に応じた治療法を、獣医師と相談の上実施してください。
また、多発性嚢胞腎を広めないためにも、この病気の遺伝子を持つ猫を絶対に交配させないようにしましょう。
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