寿命が延びて長生きするようになった反面、癌、糖尿病、心臓病など、まるで人間並みの疾患が増えてきたペット達。
医療も人間並みに高度になって、治療にも多くの選択肢が許されるようになってきています。そんな中、癌の治療方法として導入する病院が増えつつあるのが、免疫細胞療法です。
この治療法は人間の癌治療においても新しい試みですが、体に優しい治療として注目されています。今回は、免疫細胞治療法について、その概略を簡単にご説明します。
免疫細胞療法とはどんな治療なの?
通常、癌という病気は、ある程度の大きさの腫瘍になり、検査で確認できるようになって初めて発見されるケースがほとんどです。
しかしながら、癌の最小単位は細胞が変異してできる癌細胞で、癌細胞は極端な話、毎日生まれています。癌化した細胞から体を守っているのは、血液中のリンパ球による免疫力なのです。
人間にしてもペットにしても、リンパ球による免疫力が正常に機能していれば、癌細胞は破壊され、癌が腫瘍になることはありません。
しかし、免疫力が落ちてしまうと、癌細胞のパワーが上回り、癌が腫瘍化することになります。
免疫細胞療法は、癌に罹っているペット自身からリンパ球を取り出し、活性化、増殖してペットの体に戻してあげることで、ペットが本来持っている免疫力を高め、癌の増殖を抑えていく治療なのです。
免疫細胞療法はどうやって行うの?
まず、対象となるペットが免疫細胞療法に適合するかどうかを調べる必要があります。
この治療はリンパ球を増殖する治療ですので、リンパ球を宿主として潜伏する猫エイズや白血病などに罹っているペットに関しては、それらの病気を悪化させる可能性があります。
また、体力的に治療に耐えられるかどうかを見極める必要もあります。治療効果が期待できると判断された場合は、まずそのペットから血液を摂取します。
その中からリンパ球を取り出し、抗CD‐3抗体やインターロイキ-2などで刺激しつつ、培養します。
リンパ球が活性化し、リンパ球数が1000倍に増えたら、培養液の中からリンパ球を抽出し、治療に使える製剤を作ります。この製剤を生理食塩水とともに点滴して、ペットの体に戻します。
この治療の発展形として、リンパ球に癌攻撃の指示を出す樹状細胞を培養し、その役割を強めた上で、リンパ球とともに体内に戻す治療法もあります。
いずれも、ペットが元々自分の体の中に持っているリンパ球の力を活用する治療法のため、副作用が少なく、体に優しいと言われています。
免疫細胞療法の課題
現在、癌治療の主流は、外科手術、抗がん剤投与、放射線治療です。
しかしながら、抗がん剤は癌を叩くと同時にペットの免疫力をも叩いてしまう傾向があり、両刃の剣だと言われています。
また、放射能治療にも副作用があると同時に治療を受けられる施設が限られているのも難しい点でしょう。
免疫細胞治療は、未知の部分も多い治療方法で、癌を完治させる効果までは期待できないようですが、外科手術との組み合わせで、癌を抱えながらもQOL(生活の質)を維持して生きていくことが可能だと言われています。
費用が高い点や、治療を行える医療機関が限られる点、また治療可能な施設でも技術や経験に差があることなどが課題として上げられます。
ただ、癌治療におけるひとつの光明であることは間違いありませんので、選択肢のひとつとして検討できるよう、治療を受けられる施設が増えると良いですね。
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