秋の風景写真として、リスがどんぐりを抱えている可愛らしいイメージを良く見かけます。同じげっ歯類のハムスターもどんぐりを食べられるでは?と考えてしまっても、不思議ではありません。でも、ハムスターにとってどんぐりは、強力な毒となる危険性のある食べ物です。どんぐりの何が悪いのか、良く調べてみましょう。
どんぐりの渋みはタンニン
どんぐりを口にしたことはありますか?見かけはとてもカワイイのに、ものすごい苦味と渋みを感じて思わず吐き出したくなります。これは、柿やお茶にも含まれているタンニンという成分によるもの。強い消炎作用、殺菌力をもつことで知られ、さまざまな生活用品の中で利用されてきました。植物は動物への防御として、このタンニンの量を増やしてきたといわれます。タンニンはそのままの形で体内に取り込まれると、消化器官を破壊したり、大切なタンパク質を排出させてしまいます。人間は、だ液中にタンニンを無害化するPRPという成分をもっています。そのため、多少渋みのあるものを口にしても、すぐに身体を壊すことはありません。しかし、このPRPをもたないハムスターは、タンニンの害を直接受けてしまいます。
なぜリスはどんぐりを食べられるの?
野生の動物たちは、良くどんぐりを食べているようですが、やはりPRPを持っているからなのでしょうか。
まず考えられることとして、どんぐりの木の種類によるタンニンの量の多少の差異です。どれも同じように見えますが、タンニンの含量はミズナラの実では平均で8.6%、コナラでは2.7%。野生動物はこの違いを知っているのでしょうか。それでもPRPがなければ、食べ続けることで死に至る確率が高いことは、実験で明らかにされています。
もうひとつは、すぐに食べずに地面に埋没させていわゆる「あく抜き」をしているのではないかという意見です。確かに、リスたちは冬の食糧とするためにどんぐりを地面に埋めて貯蔵します。これにより、古代の人間たちが「どんぐり餅」や「どんぐりせんべい」を作るとき、水にさらしてあく抜きをしたのと同様の効果が得られているのかもしれません。
野生下にはないハムスターにどんぐりはNG
さらに野生のアカネズミを実験・観察した記録では、どんぐりが落ち始めた頃から少しずつどんぐりを食べて、身体を「慣らしている」ことが報告されています。ヒトが渋みに対抗できるのは、タンニン結合性唾液たんぱく質のおかげです。タンニンの有毒な働きを抑えるこの物質は、必要に応じて分泌量が変わります。野生のネズミたちは、生き残りをかけて、この物質を獲得してきているようです。さらに、同じコナラのどんぐりでも、タンニンの量は0.1~31.5%と幅があることがわかっています。野生動物たちは先にわずかに実をかじり、タンニン量の差異を敏感に感じ取った後、貴重な食料としているようです。
ペットであるハムスターたちは、このような耐性も見分ける能力ももっていないのが当たり前です。飼い主さんが手渡せば、よろこんで木の実を食べてしまうでしょう。また、どんぐりに含まれるタンニンの量を、確実に知っている飼い主さんがいるとは考えられません。ハムスターにとっては、どんぐりは猛毒であると認識しておいて間違いないでしょう。
ハムスターは野生動物とは違う
人間の飼育下にあるハムスターと野生の動物たちは、例え姿が似ていても、生き方がまったく違います。失われた能力も多く、それが死に至る食べ物かどうか判断できないものも、たくさん存在します。飼い主としては、ハムスターの命をしっかり守る責任があるのです。
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